こんにちは、大学受験kawaiラボの河井です。先日、数学IAの問題の話をしながらワークの解答をちゃんと汲み取るって難しいことなんだ、というお話をしましたがその告知の際に、再結晶の件は近いうちに書きます!と宣言したので忘れないうちに書こうかな、と思います。

さて、溶解度の問題の話が複雑な様相を示すのはただ1点、$$\frac{\textrm{析出量}}{\textrm{飽和溶液}}=\textrm{一定}$$のせいです。これは溶媒:溶質:溶液量の比が温度で一定であること、そして溶媒量が一定であることを利用したものであり、飽和溶液スタートで水の量が変わらない場合にはとても便利な関係性であります。例えばこのような場合。

例題1)硝酸カリウムは水100gに対し20 ºCで30 g、60 ºCで110 g溶けるものとする。60ºCの飽和溶液315 gを20 ºCに冷却すると何gの硝酸カリウムの結晶が得られるか?

解答1)求める硝酸カリウムの結晶を\(x\)gとすると$$\frac{x}{315}=\frac{110-30}{100+110}$$より\(x=120\)g。

こういう場合はとてもとても便利です。ところがどっこい、ちょっと初期設定を変えるだけでダメになってしまうのです。例えばこういう場合。

例題2)硝酸カリウムは水100gに対し20 ºCで30 g溶けるものとする。60 ºCで硝酸カリウムが40%溶けている溶液125 gを20 ºCに冷却したときに何gの硝酸カリウムの結晶が得られるか?

これはもう例の公式では太刀打ちできません。60 ºCで水100 gに硝酸カリウムは110 g溶ける、アバウトですが50%を超えるわけですから、この初期状態は飽和溶液ではないわけです。例の公式は飽和溶液スタートでないと通用しない、でした。そうするとどうすればいいのか?

解答2)溶液中に溶けている硝酸カリウムは\(125\times \frac{40}{100}=50\)gなので、水は\(125-50=75\)gである。
したがって、20 ºCで水75 gに溶ける硝酸カリウムが溶け残るので、析出量を\(x\)gとすると、$$100:30=75:(50-x)$$より\(x=27.5\)gとなる。

他にも水の量が変動するとこういう問題もあります

例題3)硝酸カリウムは水100gに対し20 ºCで30 g、60 ºCで110 g溶けるものとする。60ºCの飽和溶液315 gを水を80g蒸発させた上で20 ºCに冷却すると何gの硝酸カリウムの結晶が得られるか?

これも例の公式が通用しません。溶媒である水の量が変動してしまうからです。したがって、状況分析をして原理の溶媒:溶質:溶液の比が一定の活用に立ち返る必要があるのです。

解答3)溶液中に溶けている硝酸カリウムは\(315 \times \frac{110}{210}=165\)gなので、水は\(315-165=150\)gである。80 g蒸発させると水は70 gになる。
したがって、20 ºCで水70 gに溶ける硝酸カリウムが溶け残るので、析出量を\(x\)gとすると、$$100:30=70:(165-x)$$より\(x=144\)gとなる。

そして最後に大物、硫酸銅(II)五水和物です。硫酸銅(II)五水和物は結晶中に銅イオンCu2+1つに対して水分子が5つ(4つがCu2+の配位子として、1つが硫酸イオン間及び配位子の水との水素結合で固定された構造)になっているため、析出するときには溶媒の水を減らしますし、また、溶解すると溶媒量が増えるという特徴があります。すなわち、CuSO4•5H2O\(x\)g中にはCuSO4が\(\frac{160}{250}x \)g、H2Oが \(\frac{90}{250}x\)g含まれることに常に留意して、状況整理をすることが非常に重要なわけです。

例題4)硫酸銅(II)は80 ºCで56 g溶けるものとする。硫酸銅(II)五水和物100 gを用いて80 ºCの飽和溶液を作成するには何gの水を加えればよいか。

硫酸銅(II)の溶解度のデータは無水物のデータです。したがって、五水和物を扱うときは水と硫酸銅(II)を分割して考える必要があり、したがって、硫酸銅(II)五水和物中にCuSO4とH2Oが何gずついるのか、それを把握してから溶解度の土台である溶媒:溶質:溶液の比が一定であるに持ち込むことが必要です。

解答5)硫酸銅(II)五水和物100 g中のCuSO4は\(100\times \frac{160}{250}=64\) g、H2Oは\(100 \times \frac{90}{250}=36\) g含まれる(100–64=36 gでもOK)。
そこで水を\(x\)g加えるとすると、$$100:56=(x+36):64$$より\(x \simeq 78.3 \)gの水が必要である。

最後に硫酸銅(II)五水和物の析出に関する問題です。

例題5)硫酸銅(II)は20 ºCで20 g、80 ºCで56 g溶けるものとする。80 ºCの飽和溶液200 gを20 ºCに冷却したときに析出する硫酸銅(II)五水和物は何gか。

これは
step1) 溶けている硫酸銅(II)の量を知る
step2) 析出する硫酸銅(II)五水和物の量を求める
の2段階に分けて考える必要があります。

解答5)80 ºCの飽和溶液に溶けているCuSO4を\(x\)gとすると、$$56:(100+56)=x+200$$より\(x\simeq 71.79\)g溶けていることになる。
析出する硫酸銅(II)五水和物を\(y\)とすると、CuSO4が\(\frac{160}{250}y \)g含まれるので、溶け残るCuSO4が\(71.79-\frac{160}{250}y \)g、残りの溶液が\(200-y\)gになるので、$$20:(100+20)=\left( 71.79-\frac{160}{250}y \right):(200-y)$$より\(y\simeq 81.2\)gである。

今回はガッツリと解説ばっかりですが、テストで混乱を招くことが多いところですし、セミナー化学などでも突然解き方を変えているように見える、そういうところの問題です。少しでもこの記事が整理と定着に役立てば、と思います。

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